海藻を日常へ。東京・八重洲で生まれる「海藻ラーメン」の新しい風景

2026年3月、東京・八重洲にシーベジタブル初の常設店「シーベジスタンド」がオープンします。ランチの看板メニューは「海藻ラーメン」。海藻の研究・生産・加工まで一貫して海藻を扱ってきたシーベジタブルが、なぜラーメンという形を選んだのか。どのような一杯をつくろうとしているのか。

シーベジタブルのパートナーシェフとして海藻料理のメニュー開発に携わり、海藻ラーメンの開発を主導した岡田大介さんに、背景とこだわりを伺いました。

海藻は「語る」より「食べてもらう」方が伝わる

シーベジタブルがポップアップを行う中で、強く実感したことがありました。それは、海藻はとにかく「一口食べてもらうと印象が一気に変わる」ということです。見た目からでは伝わらない香り、弾力、旨み。岡田さんもこの経験に深くうなずきます。

岡田大介さん(以下、岡田) 海藻を手軽に食べるなら海藻サラダなんですが、どうしても種類が限られてしまいます。海藻って種類によって食感も香りも全然違うのに、それが伝わらない。ラーメンなら一度にいろんな海藻を食べられるし、誰でも注文しやすい。海藻に馴染みがない人でも、ラーメンという日本人に馴染み深いフォーマットなら抵抗が少ない。だからこそ、海藻の世界へ自然に足を踏み入れてもらえる入り口として最適なんです。

海藻の個性をまっすぐ届けたい。引き算で作るスープ

海藻ラーメンをつくる上で、まず直面したのがスープの設計。海藻を主役にするためには、スープの主張が強すぎてはいけません。

岡田 スープは魚だけでとっていますが、海藻の香りを邪魔しないように、一緒に調整しながら作っています。昆布もかつお節も使っていません。入れたら絶対に美味しくなるのは分かってるんですけど、その分、海藻の味がぼやけちゃう。海藻が主役なのに、それじゃ意味がないなと思って。だからあえて引き算のスープにしました。

スープには、シーベジタブルの「青のりしょうゆ」も少しだけ加えています。香りが前面に出るわけではありませんが、すじ青のりの繊細な旨味がスープに溶け込み、奥行きを作っています。

ただし、現在のスープはあくまでスタート地点だと岡田さんは語ります。岡田さんが大事にしているのは「最後まで飲みきれるスープ」であることです。

岡田 僕、ラーメン食べたときにスープを飲み切れるかどうかを一つの基準にしていて。美味しくても濃すぎると飲めないんですよ。子どもやシニアでも飲みきれるぐらい優しいスープにしたいっていうのはずっと思っています。

麺は10種類以上を試作。ベストは選んだが完成ではない

次に悩んだのは麺。太さ・弾力・風味の異なる10種類以上の麺を取り寄せて試し、ようやく現在の麺にたどり着いたそうです。

岡田 海藻ラーメンって前例がほぼないので、製麺所の方も一緒に考えてくれました。何種類も食べ比べて、スープとの相性がいちばん良いものを選びました。

しかし、ここでも岡田さんは「これで完成」とは言いません。

岡田 スープが変われば麺も変わるはずなんです。今後、季節によってスープを変えることがあれば、この麺もいずれ変える可能性があります。進化し続けられるのが、ラーメンの面白いところなんですよね。

一杯の中で海の多様性が立ち上がる。5種類の海藻が主役

海藻ラーメンの最大の特徴は、5種類の海藻(すじ青のり、あつばアオサ、とさかのり、若ひじき、みりん)が一杯の中で共演していることです。

岡田 海藻は「温度で性質が変わる食材」です。乾燥したすじ青のりは、どんぶりの中で半分はスープを吸ってしっとりとし、もう半分は乾いたまま香りが立つ。あつばアオサは熱が入るととろっと溶ける。とさかのりは噛むと香りが立つし、みりんは温度が上がるほどぬめりが強調され、弾力が際立ちます。若ひじきはひじきの概念が変わるほどの歯ごたえで満足度を上げ、噛むほどにひじき本来の香りが出てきます。そのコントラストが、ひと口ごとに味と香り、食感の変化を生み出します。

海藻そのものの変化を味わえる一杯ですが、組み合わせる具材によっても体験はさらに広がります。生のすじ青のりを天ぷらにして加えることでさらに旨みが加わり、海藻の軽やかさだけでなく、しっかりと食べたという満足感が生まれます。ヘルシーなだけでなく、お腹も心もしっかり満たされる一杯です。

アオサオイルが運ぶ緑の香り。「SEAVEGE- Kitchen Lab」が生んだ“魔法”

スープの味にさらに味のグラデーションを加えてくれるのが、シーベジタブルの「SEAVEGE- Kitchen Lab」が開発したアオサオイルです。

岡田 あつばアオサの香りを丁寧に引き出して油に移したこのオイルは、驚くほど緑色が鮮やかなんです。ちょっと垂らすだけで、香りが立ち上がって、海藻の旨味が出たスープの味の輪郭がさらにはっきりする魔法のような液体です。海藻ラーメンの新たな表情をお楽しみください。

夜は居酒屋。海藻のおつまみから、季節メニューの構想も

夜のシーベジスタンドは、基本的には立ち飲みです。 「すじ青のりかけすぎフライドポテト」や、どのお店よりも海藻がたっぷり使われたシーベジタブルらしい海藻サラダ、季節ごとの海藻料理など、気軽につまめる海藻小皿料理を中心に構成しています。

岡田 海藻料理は、出したいものが沢山あるんですよ。でもまずは、その中でもこれを食べてもらえたら海藻の世界観が伝わる!というメニューにしぼってスタートします。お客さんの反応を見ながら、季節の海藻料理も提案していくつもりです。春は様々な海藻のハイシーズンなので、中々食べることの出来ないフレッシュな海藻を活用したメニューを提供したり、季節感だけでなく、ジャンルレスな海藻料理をメニューにすることで、料理の世界での新たな海藻の立ち位置を表現していきます。 

ラーメンは海藻の未来を広げるための、いちばん素直な入り口

岡田 海藻料理は、海藻サラダに代表されるワカメのように<ちょっと添えるもの>になりがちです。でも、海藻って本当は主役になれる食材なんです。種類も多いし、食感も香りも全然違う。それをちゃんと伝えるなら、ラーメンがいちばんいいと思います。

健康を前に出しすぎないのも、岡田さんの哲学です。

岡田 ヘルシーだからじゃなくて、美味しいから食べてほしい。食べてみたら実は体にもいいんだっていう順番の方が自然なんじゃないのかな。海藻ラーメンはその入り口になれると思うんです。

八重洲で始まる海藻ラーメンは、オープン直前まで進化を続けていきます。温度で変わる海藻の表情や、種類ごとに異なる香り。海藻が織りなす一杯を味わいながら、海藻の新しい魅力に出会ってみてください。

記事公開日:2025年12月15日

シーベジスタンド店舗概要

店名:シーベジスタンド
所在地:東京都中央区八重洲
グランドオープン:2026年3月2日(月) ※予定
営業時間:ランチ 11:30〜14:00(L.O.13:30)/ディナー 18:00〜22:30(L.O.22:00) ※予定
プレオープン:2025年2月2日(月)〜27日(金)(「Makuake」優先予約枠での営業)

>>【プレスリリース】初の常設店「シーベジスタンド」を2026年3月に東京・八重洲にオープン

>>【SNS】シーベジスタンド InstagramFacebook


2025年12月1日(月)11:30より、応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」にて先行予約プロジェクトを開始します。シーベジスタンドの体験をいち早く楽しめる2つのリターンをご用意しています。

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岡田大介(すし作家/海藻料理研究家)

1979年生まれ。すし職人歴28年(2025年現在)東京都文京区にてすし屋「酢飯屋(すめしや)」を経営。生きものが食べものになるまでを突き詰めるために、すし職人の観点を常に持ちながら、まな板の上だけでなく海に潜ったり、釣りをしたりと、食材のホームグラウンドに入り込み、現在は「すし作家」として海、魚、すし、海藻にまつわる様々な活動をしている。『やりたいことは、やってみる。』これが岡田大介の基本理念です。著書に写真絵本『おすしやさんにいらっしゃい!生きものが食べものになるまで』、文庫『すし本 海から上がって酢飯にのるまで』。酢飯屋(ブログ)