酢飯屋 岡田の「はばのり」徹底紹介! Vol.2 ~偏愛者への道~
<<<前回は、ハバノリがどんなところに生きているのか、どんな姿なのか、ハバノリの「基本のキ」をお伝えしました。はじめましての方はぜひVol.1から!
「酢飯屋 岡田の「はばのり」徹底紹介! Vol.1~基本のキ~」
香味は、素干しわかめを初めて嗅いだ時のあの感覚。
古くなったアサクサノリ、スリランカ紅茶の年代もの、昆布、干し梅などを連想させる香りに磯をプラスしたような。独特の苦みとえぐみがあるので、好き嫌いが分かれそうですが、それでいいのだと思います。
本来は海辺の村の方々が、冬から春の大潮のときに採集し、
アサクサノリの代用品として自家用に生産・消費されたものだったそうです。
自家製で作られたものは、でこぼこで隙間も多く、いかにも田舎っぽい食べ物とされていましたが、現在はその素朴さが自然で良く思われる時代です。
生産量も少なく、大部分が地元の消費で、流通も採取時期以外は少ないことなどから
大判海苔1枚が数百円から千円以上の高級食材として流通しています。
神奈川県西部の特に湯河原町や真鶴町では、
2月頃の寒い時期に町内の各店先やイベント会場などで販売されています。
やはり高価な食材にはなっていますが、貴重品ですので真っ当です。
主に火でよく炙って緑色に変色させた後、ご飯の上に揉んで細かく砕き
鰹節と醤油をかけて食べられたり味噌汁の具材などにも使われたりしています。
三重県尾鷲市でも
白ごはんに炙ったはばのりを砕いて醤油をかけて食べるのが定番となっております。
とにかく、海藻としては文化圏が非常に狭いものなので
この海藻の可能性はもっともっと試して、広げていくべき品種に思います。
わかりやすく美味しい海苔類とは異なるので、
ある程度の調理経験や味覚年齢が高い方でないと
ハバノリをいなすのは容易ではないと思います。
乾燥のハバノリは、基本的には焼いてから食べます。
【焼きハバノリ】
※200度のトースターで20秒ほど、鮮やかな緑色に変わるのが目安です。
フライパンで空炒りでもOK。
焼いたハバノリは、指先で簡単にパラパラと細かくすることができます。
【乾燥ハバノリと焼きハバノリの比較写真】
左が乾燥ハバノリ
右がそれを焼いたもの
色も香りも食感も変化します。
こちらは、近縁種の
ハバモドキ目カヤモノリ科フクロノリ属セイヨウハバノリ(Petalonia fascia)
体は細長くて薄いです。
潮間帯下部の岩礁上に生じます。
これが「ハバノリ」として販売されている場合もあります。
見分けが難しいですが、体の断面を顕微鏡で見ると髄層に糸状細胞があるので区別できます。
他にも
ウイキョウモ目
ハバモドキ科の
ハバモドキという似た海藻もあります。
>>>次回は、ハバノリの最大の魅力であるクセをどう活かすのか。岡田さんおすすめの使い方を一挙公開!
「酢飯屋 岡田の「はばのり」徹底紹介! Vol.3 ~もっと好きになる使い方~」
岡田大介(おかだ だいすけ)
1979年生まれ 寿司作家・寿司職人
18歳で食の世界へ、寿司の道を修行し24歳で寿司職人として独立。
2008年、東京都中央区にて1日1組の完全紹介制の寿司屋「酢飯屋(すめしや)」を開業。
食通達の間で話題となる。
その後浅草橋、2016年より文京区江戸川橋に移転。
フランスの寿司漫画『L’Art du Sushi』のモデルや、
新国立新美術館での、器や食のキュレーションなど、
寿司職人という職業の可能性を日々広げている。
著書に『おすしやさんにいらっしゃい!』(発行:岩崎書店)『季節のおうち寿司』(発行:PHP研究所)