三越伊勢丹「EAT & MEET SEA VEGETABLE」

〜「おいしい」の合言葉と「たのしい」の熱量で広がる海藻の世界〜【後編】

日本橋三越本店と伊勢丹新宿店で、海藻の新たな食体験や学びを通じてその可能性に触れることができるフェア「EAT & MEET SEA VEGETABLE」が開催されます。

総勢120店舗以上がシーベジタブルの海藻を使って商品を開発するという、海藻の新たな歴史をつくるようなフェアは、どのようにして実現したのか?海藻の魅了を伝える人、考える人、調理する人、食べる人。「おいしい」「たのしい」「もっと知りたい」をつなげた、その舞台裏に迫ります。

<<【前編】〜はじまりの物語〜

>話し手

右原洋平さん(株式会社三越伊勢丹 三越日本橋本店 第1営業部(食品) 商品担当)
井上孝さん(株式会社三越伊勢丹 三越日本橋本店 第1営業部(食品) 洋菓子バイヤー)
真野重雄さん(株式会社三越伊勢丹 第1MDグループ 新宿食品・レストラン商品部 生鮮・グローサリー バイヤー)
友廣裕一(合同会社シーベジタブル 共同代表)

「美味しいものを作る」その原点回帰に一役買った海藻

― 商品開発に向けた動きについてもお聞きしていきます。取り組み先とのコミュニケーションについて、「難しかった」「ここは面白く進められた」というエピソードはありますか?

 井上:今回、日本橋三越本店の洋菓子は12アイテム展開させていただきます。合計10ブランドですが、それぞれのブランドの良さをしっかりと生かした魅力的なアイテムが実現しました。

シーベジタブルの皆さんには、〈HiO ICE CREAM〉というアイスクリーム屋さんの厨房に一緒に来ていただいたことがありました。最初から予定されていた試食会だけではなく、さまざまな場所で意見交換ができたので、これまでにない商品開発ができたと感じています。

他にも、〈モンシェール〉というロールケーキ屋さんとの取り組みでは、今までであれば試食のときに「これでいいですね」と言う温度感で進んでいくところ、「すじ青のりを使っているけど、量が少なくてインパクトがないよね」といった意見が出るようになりました。シーベジタブルさんの食材をちゃんと理解して食べているメンバーが増えてきたことで、すじ青のりの風味をしっかりと感じてもらうために「もっとこうした方がいいのではないか」といった意見交換が担当外の人間でもできるような場をつくれたのです。こうした話ができるようになったことは、とても面白かったです。

右原:これまでは、バイヤーたちは、自分たちが企画した商品に対して「どこに企画のポイントを置いたか」をプレゼンすることが多かったのですが、今回は「シーベジタブルさんの取り組みに共感した」というコメントが前提に語られることが何度かありました。「サステナブルだからやる」というよりも、「おいしいからやる」という、味に関することに言及した声が目立ちました。取り組みの背景を理解した上でプレゼンをしている点が印象的でした。

今回の取り組み先からも、「いつものオンリー・エムアイの企画のとき以上に取り組みの背景を三越伊勢丹さんが熱意を持ってしっかり話してくれたので、すごくやる気が上がりました」と言うように、取組先の関心も、取り組みや素材の背景にまで深く入り込んでいらっしゃいました。私たちも取組先様も同じ温度で商品開発に取組めたことが、今まで以上の規模で企画できた要因かなと思います。我々にとってもすごく考えさせられるきっかけになりました。

真野:このような素材連動企画や限定品の作成は、入社以来20年以上やってきましたが、弊社から素材を提示し、取組先様からの提案を待つことが多いです。今回は、インプットの質をどれだけ高められるかが非常に重要なポイントだと感じたので、われわれ自身も学びながら、おそらく、取り組み先にも各バイヤーが今までとは違うインプットを提供できたのではないでしょうか。

真野:私の担当分野では、生鮮素材、肉や魚といった生ものから加工品までやっているのですが、今回は特に生ものとの掛け合わせが難しかったです。具体的には、漬魚で、お客さんが持ち帰って焼く前の状態に海藻のエッセンスをしみこませて、家庭で焼いた時に海藻感が感じられるような、半調味品のようなものに挑戦しました。海藻の特徴もあり、加熱すると香りが飛んでしまうなど、とても難しかったです。それでも、普段なら諦めてしまうようなところで2回、3回、4回と試作を重ね、最終的には「すじ青のりを付けすぎじゃない?」と思うようなものまで出てきました(笑)。前向きに美味しいものを作ろうというような、私たちにとって最も大切な原点であるエッセンスが感じられたので、そういった反応が見られたことが僕自身としても非常にうれしく感じています。

― シーベジタブルのメンバーがプロジェクトに伴走する中で、印象的なエピソードはありますか?

真野:シーベジタブルのメンバーは、とにかく会う人会う人、面白い人が多いのが印象的でした。百貨店のメンバーと西伊豆の生産拠点に行く前に、勝手に一人で天草にある生産拠点に行ってきました。その夜に宿泊していた宿で生産現場のメンバーと酒を酌み交わし、楽しい時間を過ごしました。あの時の天草のメンバーは、みんなすごいパッションがあって、それぞれがいろいろな方向で得意分野を持っていました。彼らとの交流は本当に面白かったです。

例えば、石坂さんというスーパーシェフでありながらストイックなシェフもいれば、営業担当の高山さんや寺松さんなど、若いのに責任ある役割を担っていてすごく前向きな人もいる。これまでに出会った会社や取り組み先とはまた違った要素がある。その違いをいろいろなタイミングで垣間見られるので、非常に刺激をもらっています。

井上:この取り組みのはじめに行ったオンライン説明会で、和菓子バイヤーが、「和菓子の場合、海藻をどうやって使うのかイメージがつかない」と質問したことがありました。その後、シーベジタブルのパートナーシェフである岡田大介さんが、いろんな海藻を使った料理を紹介してくださる試食会を開催したときに、わざわざ伊勢丹や三越でいろいろな和菓子を買ってきてくださったんです。和菓子に海藻をのせたり和えたりして「こんな使い方があるんですよ」と提案してくれました。本来であれば、私たちが「こんな使い方でいいですか?」と聞かなければいけないところですが、シーベジタブルの皆さんの熱心な姿勢をひしひしと感じました。

― このプロジェクトを通じて、百貨店になかなか足を運ばない人たちに伝えたいことがあるとすれば、どんなことでしょうか?

井上:ここに至るまで、「なぜシーベジタブルさんの素材を使うの?」という質問が、社内で時折出ることがありました。そのときに、「シーベジタブルが環境について熱心に取り組んでいる会社だから組む、ということではない」という話しをしました。シーベジタブルさんは、「海に海藻を増やすことで、海の環境をよくしよう」というミッションを掲げていますが、それと同時に、食を通してさまざまな海藻の食べ方を消費者の方々に知ってもらいたいという想いがあります。だからこそ、「みんなでやってみよう」という気持ちにつながったのではないでしょうか。

そう考えると、今回の企画は、食から入って来てくれる人もいれば、シーベジタブルさんの取り組みに関心を持っている方もいるし、中には普段デパートに来ない方もたくさんいらっしゃると思います。今回、さまざまな形で海藻の魅力を伝えることができれば、海藻に興味を持つ人、三越伊勢丹のお客様、シーベジタブルさんのファンの方々など、さまざまな方に来ていただけるフェアになるのではないかと期待しています。

右原:今回の取り組みが、お客様にとって食について考える何かのきっかけになればいいなと思っています。これまで私たちが行ってきた企画の中で、最も多くの接点を生み出すことができると思います。同じ海藻という素材を使ってこれだけのバリエーションがあるということは、取組先様やバイヤーの協力があってこそ実現できたことです。どんな些細なきっかけでも良い。海藻だと知らずに購入してもいいですし、買って食べてみて何か気づくことや感じることがあれば、それで十分だと思っています。

もちろん、海のことや地球環境のことまで伝われば良いですが、まずはとにかくお買い物を愉しんでいただき、そして美味しく召し上がっていただくことですね。そして、その先に興味を持って、「なぜ三越伊勢丹はシーベジタブルと組んだんだろう?」「今、海藻ってどういう状況なんだろう?」とお客様が自発的に調べていただければいいのかなと思います。今回の取り組みが、いろんな場所で発信され、お客様に気づいてもらえれば、それが私たちのメッセージであり、願いです。

真野:シーベジタブルさんには「海の環境を取り戻す」といった環境的なミッションもありますが、それを実現するためには、多くの消費者につなげることがビジネスとしても非常に大事です。そして、そのための役割を私たちが担っていると思いますので、できるだけ多くのお客様に届けられるといいなと思っています。

私は、以前「サロン・デュ・ショコラ」というチョコレートのイベント担当をしていましたが、例えば、カカオに関心のない人にいくらカカオやbean to barのすごさを言ったところで、届きませんよね。でも、そのカカオを一流の料理人と掛け合わせたり、今までのチョコレートとは異なる範疇のものと掛け合わせたりすることで、お客様の幅が一気に広がります。そういったイメージを持っていたので、今回、海藻をやることになったときも、全カテゴリーに広げないと絶対に僕たちの目標としているところには届かないだろうと思い、全体に広げることにしました。

(画像:「サロン・デュ・ショコラ2024」で提供した海のパヴロヴァ )

真野:その結果、まずは接点を持ってもらい、その中には単純に海藻が好きな人や、取り組み自体に関心を持ってくださる方など、さまざまなお客様がいると思います。最終的に関心を持った人が「シーベジタブルってどんな会社なの?」「他にどんな商品を作っているの?」と一度でも検索してくれれば、そこに素晴らしいプレゼンテーションが用意されています。そういった小さなところからの循環を、回を重ねるごとに大きくしていくイメージでやっていければと思っています。

右原:今回の取り組みは非常に大事な機会で期待値も高いです。ただ、それ以上に、バイヤーたちの仕事の取り組み方についても良い機会をもらいました。今後、他の企画でも、同じ温度感で取り組み、裏側にある背景や、お客様への伝え方も含めて、どうしたらよいかしっかり考えて仕事をしていきたいと思います。こうした取り組み方を続けることで、お客さまに喜んでいただく価値を提供することが出来ると思いますし、バイヤーたちの魅力もさらに高まると思います。

友廣:取り組み先の方々やバイヤーさんとやりとりを続ける中で、今回あらゆるジャンルで海藻が使われた商品が開発されました。今は新しく見えるかもしれませんが、5年後や10年後には、多くの方が普通に海藻の和菓子や洋菓子を食べている風景がやってくるのではないかと感じています。そういう確信に似たようなものを感じているのですが、そのときに「あのフェアからすべてがはじまったよね」と言えるような、そんな一歩目を僕たちは今、経験しているのだろうと感じます。いつか子どもたちが、海藻料理やスイーツを普通に食べている日が来るのが楽しみです。

― 最後に、今回開発された商品の中で、真っ先におすすめしたいものはどれですか?

真野:私が担当している生鮮・グロサリーでは、漬魚でしょうか。私たちが干物や漬魚を売っている〈魚勢〉というショップがあります。そこで、海藻の香りを引き出すために、塩麹とすじ青のりを組み合わせた漬魚を開発しました。海藻のエッセンスやエキス、旨みや香りを半調味品にうまく移すことができれば、お肉との掛け合わせも含めてさらに広がりを持たせられると考えています。新しい半調味品のカテゴリーとして、ぜひパンチのあるものに仕上げたいという強い思いでやっています。

(画像:〈魚勢〉の試食会では、サワラ、銀鮭、赤魚、メロなど、様々な魚種の試作品が並んだ。)

井上:洋菓子の中では、シンプルな〈HiO ICE CREAM〉と、さまざまな変化が楽しめる〈ノワ・ドゥ・ブール〉のフィナンシェが一推しです。

〈HiO ICE CREAM〉は、ミルクアイスクリームにすじ青のりを混ぜ、さらにコーンにもすじ青のりを練り込んで焼き上げています。面白かったのは、最初に〈HiO ICE CREAM〉の製造の方が入れたすじ青のりの量が少し物足りなかったため、最終的に当初の3倍まで量を増やしました。素材の風味を最大限に活かすために何度も調整を行い、シンプルながらも素材の良さがしっかりと引き出されていました。乳製品にはすじ青のりが合うと教えてもらいましたが、まさにその通りで、間違いなくお客様にも喜んでいただけると感じました。

二つ目は、〈ノワ・ドゥ・ブール〉のフィナンシェです。〈ノワ・ドゥ・ブール〉といえば行列ができる焼きたてのフィナンシェが有名ですが、今回はフィナンシェの上にチーズと3種類のナッツを乗せ、さらに塩味を加えることで新しい風味を感じられるようにしました。通常のバター感を楽しみつつ、ひとつのフィナンシェで多様な味わいが楽しめる商品に仕上がっています。

今回のフィナンシェは、一日150個から200個ほど作ってもらおうと思っていて、多くのお客様に新しい味わいを知ってもらえるきっかけになると思います。

右原:今回、両店で約120ショップ以上が関わり、170アイテムほど作るという壮大な規模感になっています。120ショップもあるとすべてを試食するのは難しいかもしれませんが、会期中に両店での買い回りを楽しんでいただきながら、海藻の幅の広さを実感してもらいたいです。

>真野重雄さん
伊勢丹新宿店 生鮮・グローサリー担当バイヤー。入社以来、食品畑一筋。趣味は食旅。生産者である人やその土に触れること、その土地ならではの素材や食文化・食風土を感じることが生きがい。座右の銘は、「百聞は一見にしかず」。興味のある食は必ず「自分の目で見る、味わう」ことを大切にしている。

>井上孝さん
入社以来、新宿・府中・大阪・銀座店で、長年菓子バイヤーを務め、23年度より日本橋店洋菓子バイヤーに着任。常設店舗だけでなく、日本全国の多くのパティシエやシェフとの交流がある。

>右原洋平さん
入社2年目より新宿店食品担当として洋菓子・生鮮担当などの商品担当を務め、23年度より日本橋店食品フロアの計画業務を行う商品担当に着任。主な業務は食品フロアのリニューアル計画を担う。

ー 開催概要 ー


伊勢丹新宿店

2024年9月18(水)〜10月1日(火)
*シーベジタブルの特別ブース出店は9月18日(水)~24日(火)まで

東京都新宿区新宿3-14-1
伊勢丹新宿店 本館地下1階 食料品

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日本橋三越本店

2024年9月25日(水)〜10月8日(火)
*シーベジタブルの特別ブース出店は10月2日(水)~8日(火)まで

東京都中央区日本橋室町1-4-1
日本橋三越本店 本館地下1階 食料品

詳しくはこちら

\100個限定!特別セットを販売/

【EAT & MEET SEA VEGETABLE】の開催を記念した特別セットを、シーベジタブル公式オンラインストアだけで限定販売。

今回初お披露目となる、海藻の手描きイラストが入ったオリジナル風呂敷をはじめ、定番商品のすじ青のりや、八幡屋礒五郎さんとコラボレーションしたオリジナルのすじ青のり七味などがセットになりました。

数量限定販売のため、ぜひお早めにお買い求めください。

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