【赤坂柿山】富山県産の香りが強いもち米と、海藻のうまみの共演
株式会社赤坂柿山 第一営業グループ スーパーバイザー 饗場(あいば)幸英さん
株式会社 三越伊勢丹 三越日本橋本店 第1営業部 和菓子バイヤー 高田幸子さん
株式会社赤坂柿山 ブランドクリエイト部 部長 長谷川友紀さん
合同会社シーベジタブル 共同代表 友廣裕一
もち米と会うのは、すじ青のりか若ひじきなのか?
饗場: 〈赤坂柿山〉は東京の赤坂に本店を構えている、あられ、おかきの専門店です。創業して53年で、工場は富山にあります。なぜ富山にあるかと言いますと、主原料が新大正(しんたいしょう)というもち米なんですが、これは富山が主な生産地のもち米なので工場を富山に構えています。基本は100%自社工場で自社生産をしています。三越さんを中心に百貨店さんや駅ビルさんなど、今は約50店舗ほど構えています。
ー 今回は、すじ青のりを使って、おかきを開発されました。海藻を使う上で、難しいと感じた点はありますか?
長谷川:正直に言うと、米菓に青のりという組み合わせは普通です。今回いただいた海藻のサンプルを使って混ぜ込んでも、普通のおかきにしか出来上がらないのでは?と思ったんです。新大正もち米は香りがとても強く、さらに、うまみも強いもち米です。私は商品企画をしながら、いつももちに負けて困ることがあるぐらい、もちの香りが非常に強いのが特徴です。すじ青のり以外だと、若ひじきがありました。ひじきを使った米菓はあまりないため、 ひじきの味を引き出したいと頑張ったんですが、結果的に、ひじきの良さがそこまで立たなかったので、今回は、おいしさを優先してすじ青のりを採用しました。
高田:この企画を考えたときに、 〈赤坂柿山〉さんの持っているおかきの味のおいしさと、シーベジタブルの海藻のうまみが出る形を模索しなければと考えました。とにかく、材料のお米がおいしいので。
長谷川:素焼きのかき餅の原材料は、もち米、海藻、塩とシンプルです。試作品として、塩蔵の若ひじきも使いましたが、米菓は水分値を4%以下にしなければいけません。水で戻して塩抜きし、また乾かした後に混ぜるのは少し手間なので、塩蔵のまま使いました。これが、なかなか難しかったです。 過去にワカメは入れたことがあり、そちらはワカメがサクサクとしていたのですが、今回は思いのほか杵つきで粉砕されてしまいました。
饗場:ひじきでかき餅がおいしいことはわかっていたのですが、 現状では、味がいまいちですね。もう少し試作を重ねるとよさが出てくると思います。
古くて新しい食材といえる、海藻
ー これまでも海藻を使った米菓を開発していますが、シーベジタブルの海藻を使った感想は?
長谷川:これほどしっかりした海藻は久しぶりに見ました。普段のものよりも香りが非常によいです。私たちが入社したのは、30年ぐらい前ですが、当時は、すじ青のりを使った「古乃端(このは)」がありました。四万十のすじ青のりを使っていましたが、全然穫れなくなったことでコストが合わずやめてしまったという経緯があります。四万十のすじ青のりはすごく香りが良くて、その後も何回か使いたいと思っていたのですが、高価で使えないことが続いてしまって。今回、うちの工場でも「すじ青のりだ!」と、喜んでいました。
ー 工場の方は、普段から海藻の取り扱いに慣れているんですね。
長谷川:青のりや昆布はうちの工場内で使っているため、海藻はみんな詳しいです。富山は昆布県なので、もともと昆布を非常によく使っています。北陸のおかきには昆布が入っているのですが、あまり他の地域には昆布が入っていません。私は昆布のおかきが好きすぎていろいろなシーンで昆布のおかきを推しすぎてしまい、昆布屋さんに「材料が足りないよ」と怒られているようです(笑)。昆布を使ったおかきは、うちのお客さまも、皆さん好きですね。
ー 主に試行錯誤されたのは、どの海藻を使うのか、もしくは、海藻の混ぜ方といった製法ですか?
長谷川:おかきの種類と海藻の使い方です。最初はもちに海藻を混ぜ込んでしまおうかという話もあったのですが、やはりすじ青のりの香りが立たないということがありました。そのため、まずは口に入れた時に、舌に最初に乗るのは海藻がいいということで、周りにつけました。私たちは、先味・中味・後味という言い方をしているのですが、先味が海藻で、中味にお醤油・お米の味がきて、お米の香りが最後の後味に広がり、磯の香りと混ざるという感じになるように、開発担当が頑張りました。
私が今回の試作の中で一番びっくりしたことは、ひじきが粉砕されてしまったことです。こんなに粉々にされてしまうのかと思いました。形を残すには、水に戻さなければいけないのか、ある程度粗い状態から始めればいいのか、少し研究してみたいと思いました。
キャプション)右が試作品の若ひじきのかき餅。左がすじ青のりの「古乃端」。
紅藻類の赤色に魅せられて
ー 今後開発するとしたら、どんなおかきをつくりますか?
饗場:赤色の「とさかのり」で試してみるのも面白そうです。どうしてもおかきは、醤油か塩を使うので、茶色か白になります。「とさかのり」を最初に見た時に、どれだけの色が出せるのかな思って、少しやってみてもいいのかなと思いました。
友廣: 〈赤坂柿山〉の定番である薄焼きおかき「慶長」に「とさかのり」を水で戻して、プレスしたようなものをピタッと合わせたりするのも面白いかもしれません。
長谷川:いいですね。佃煮のような味がついていると、海苔の代わりになって面白いかもしれないです。
饗場:今回はよいお題をいただいた、というのが僕の最初の感想でした。異素材で開発する方が、うちの工場にとって勉強になりますし、新たな発見になります。ずっと同じことをやっていると、新しいことに対して「いや、これはできないよ」というふうになってしまいます。「一回やったことがあるよね」ということを繰り返していかないと、当たり前のことしかできなくなります。異素材に取り組んだり、今回の海藻のように、水分値を抑えるためにどうするのか?というようなことを考えていく方がよいと思います。
長谷川:おかきやおせんべいは、昔からある当たり前のお菓子なので日本人には馴染んでいますが、新しく食べてみようという人たちがあまりいません。こういった挑戦により、全然違うものを作ることで、「食べてみようかな」と思うきっかけをつくりたいです。「古乃端」のおかきは、見た目は普通ですが、自慢の味なので自信を持って出せます。
饗場:次回は何か別の素材で取り組めたらと思っています。
長谷川:年々海産物が獲れなくなっていて、昆布や白エビも減っています。いろいろなものが穫れないという話が続いていて、お米もいよいよ危ない。シーベジタブルと一緒にいろいろな産業を盛り上げていきたいということを開発担当者とも話していました。ぜひ、富山の海でも海藻を増やしてください。
ー 最後に「EAT & MEET SEA VEGETABLE 」に向けて意気込みを一言
饗場:人気が出てあまり早く売れてしまうと、バイヤーの高田さんに怒られてしまいます(笑)。「古乃端」の周りについているすじ青のりが美しいので、まずは、見た目を楽しんでいただきたいですね。最初にすじ青のりを見たときに、「こんなにきれいに青色が出るんだな」と思いました。その感動を、うちの販売員が、間違いなくしっかりとお客様にお伝えしていきます。