【吉川水産】海藻は魚のゆりかご、魚屋だからこそ海藻に光をあてたい
合同会社シーベジタブル 友廣裕一
吉川水産株式会社 関東事業部 ブロック長 木下祐樹さん
株式会社三越伊勢丹 日本橋三越本店 営業統括部 第一営業部 生鮮・グローサリー バイヤー 片桐健治さん
メインはどっち?主役になるとびきりの海藻
―今回、すじ青のり・若ひじき・とさかのりの3種類の海藻を使って商品開発をされましたがいかがでしたか?
木下:最初に試食したとき、香りがよくて本当においしいと思いました。シーベジタブルさんのすじ青のりや若ひじきは、香りが強くて味も濃い。これまで使っていた既製品の海藻とはまったくレベルが違うと感じました。今回はこれらの風味や食感などを生かして、4種類の商品を開発しました。
- みりん・若ひじき・鮮魚のシーベジカルパッチョ仕立て
- すじ青のりのおみそ汁(レンジアップ商品)
- 富山湾の秋カマスの刺身
- 若ひじきと魚や海老のムニエル(レンジアップ商品)
友廣:ありがとうございます。まさか4種類も出てくるとは。カマスと海藻の盛り合わせが印象的です。いつも脇役になりがちな海藻が表舞台に立ったような商品ですね。
片桐:この季節は富山湾でとれた生のままで食べられるカマスが出回るんですよ。
木下:若ひじきは生のサラダのような感覚で。真鯛と組み合わせたカルパッチョならば、素材の風味が伝わるのではないかと思いました。弊社のおすすめはレンジアップ商品です。お客様に海藻の風味を味わってもらうならば、レンジアップの味噌汁が一番いいと思いました。レンジアップは弊社の売れ筋なので。商品開発をした現場のメンバーも試作するときにほぼ迷いはなかったそうです。
>シーベジタブルのパートナーシャフである岡田大介さんにレンジアップの商品を食べてもらい意見交換を行った。
木下:海藻入りの味噌汁はこれまでも販売していましたが、すじ青のりでさらに風味をブラッシュアップしました。もうひとつのレンジアップ商品は、若ひじきと魚や海老のムニエル仕立て。こちらも加熱するだけで手軽に食べられるように数種類を用意しています。
友廣:そもそも、僕たちには海藻をレンジにかけるという発想がなくて。ひじきをレンジで加熱したらどうなるのかな?と思いました。でも、実際に食べると若ひじきのシャキシャキした食感や風味がそのまま残っていますね。ひじきがいい仕事しているなと。海藻をさまざまなかたちで表現してくださって嬉しいです。
>すじ青のりが入った味噌汁の商品。そのままレンジで3分程温める
―栄養面からもアプローチしたい海藻の可能性
木下:弊社では海藻は健康食やスーパーフードとして注目されているジャンルだと認識し、コロナ禍以降、海藻の販売に力を入れてきました。地域の特性で売れゆきや規模感の違いはありますが、海藻コーナーを設置した店舗もあり、めかぶやモズクを三杯酢や黒酢などで味付けしたアウトパック商品も種類を揃えています。
―海藻に力を入れるようになったきっかけは何ですか?
木下:コロナ禍の影響で健康志向が高まったことがきっかけです。例えば、スーパーなどで納豆が飛ぶように売れたこともありました。健康というカテゴリーに着目したとき、魚屋で扱うものならば何だろうか?と。お客様が手に取りやすいものでプラスアルファの要素を考えると、やっぱりわかめやめかぶ、もずくですよね。海藻の販売に力を入れたところ、かなりの手ごたえがありました。今も需要のあるジャンルなので、弊社では継続して販売に取り組んでいます。
>試食会で提供された、みりん・若ひじき・鮮魚のシーベジカルパッチョ仕立て。
木下:海藻にはさまざまな可能性があると感じます。今後はお客様にそれをどう伝えていくかが肝になるでしょう。海藻は食べておいしいだけでなく、栄養素や健康面でもすぐれた点がたくさんあります。私も海藻について知らないことがたくさんあります。魚のプロである私たちが海藻のおいしい食べ方や、海藻のさまざまなメリットを店頭でお客様にもっとお伝えすることができれば海藻の可能性は広がるはずです。
―魚と海藻をおいしく食べ続けてもらえるように
片桐:シーベジタブルさんとの出会いは、2024年2月にシーベジタブルのテストキッチンで開催された石坂秀威シェフの華麗なる海藻のイベントがきっかけでした。その後、社内の異動があり、私は生鮮食品やグロサリー担当のバイヤーになりました。5月には西伊豆にある研究と生産拠点を実際に見学させていただきました。現地でさまざまな海藻を試食して、船にも乗せてもらいました。今度はぜひ、吉川さんにもご参加いただきたいです。
友廣:参加されたみなさんは、これまで現場に行くという機会がなかったとおっしゃっていました。今回はバイヤーさん向けのバスツアーでしたが、来年も開催したいと考えています。次回はぜひ、出店者の方々にも現場に来ていただく機会を作りたいですね。
片桐:シーベジタブルさんの海藻はクオリティが素晴らしいので、海藻がはぐくまれる背景や現場の想いも含めてお客様に伝えていきたいです。「食」に対するこだわりや感度の高いお客様はたくさんいらっしゃいますからね。
ー 最後に「EAT & MEET SEA VEGETABLE」に向けて意気込みを一言。
木下:一番大事なことは、海藻について知ってもらうこと。栄養面のメリットは、海藻ならではの強みだと思います。お客様に店頭で商品を見てもらいながら、直接その良さを伝えられたら一番いい。私たちは海藻のさまざまな魅力をお客さまにお伝えできるよう、今後も海藻を使った商品開発や提案をしていきたいです。
片桐:「EAT & MEET SEA VEGETABLE」は期間限定ですが、私のなかでは海藻に関心を持っていただく機会が長期的な取り組みとして根付いていけばと考えています。今回は、そのスタートです。イベントで映えるのは、スイーツなどかもしれません。でも、魚と海藻の関係性は切っても切れない。海藻を今後も食べ続けてもらえるならば、最終的にお客様は私たちのような魚屋のゾーンに帰って来てくださるのではないかと。
片桐:シーベジタブルさんが海藻とともにめざす続可能な世界観は、これから絶対に必要になってくる。今回の企画にかかわりながら、海藻のことを知れば知るほど感じています。私は魚や刺身のツマを食べるのが好きですが、スーパーで刺身のツマに添えられている海藻はほとんどが食べないまま捨ててしまう方も多いのではないでしょうか。でも、居酒屋さんに行った時、刺身に添えたツマまでもがおいしかったら嬉しくなります。今回の企画でも、刺身のツマを本当においしい海藻に変えることでフードロスの削減に取組み、魚と海藻をおいしく食べてもらえたらと願っています。