INTERVIEW:海の野菜から広がる新しい食卓のかたち【DEAN & DELUCA】
シーベジタブルは、海藻を起点に持続可能で豊かな食文化を育んでいく取り組みの一環として、共創パートナーである企業やブランドのキーパーソンと対話を重ね、それぞれの価値観をひもとくインタビューを行っています。
今回は、株式会社ウェルカムの境哲也さんをゲストに迎え、海藻という食材が広げる新しい食の体験や、そこに宿る文化的な価値についてお話を伺いました。
>話し手
境哲也さん(株式会社ウェルカム DEAN & DELUCA エグゼクティブシェフ)
友廣裕一(合同会社シーベジタブル 共同代表)
>聞き手
寺松千尋(合同会社シーベジタブル マネージャー)

〈DEAN & DELUCA〉春のプロモーション
『EAT MORE GREENS 〜野菜をもっとおいしく食べよう〜
DEAN & DELUCAは、毎年春の「アースデー」に向けて、旬の野菜を取り入れたおいしくてサステナブルなデリ惣菜のメニューを展開しています。食のたのしさとともに、持続可能な食材を取り入れることの大切さ、地球に優しいライフスタイルを提案しています。
2025年はシーベジタブルと初めてのコラボレーションを実施。海藻の新しい魅力を伝える、栄養価の高い海藻を使った特別メニューを展開。シェフが厳選した「すじ青のり」「とさかのり」「若ひじき」を使った特別メニューを販売しました。
【DEAN & DELUCA × シーベジタブル】コラボ商品の裏側
寺松: DEAN & DELUCAさんの特別メニューで、シーベジタブルの海藻を使用した5種のデリを期間限定で提供いただきました。2024年11月にウェルカムの皆さんで西伊豆にいらしていただきましたよね。
境:今回は、ふだん商品開発をしないスタッフたちに初めて開発に携わってもらいました。実際にシーベジタブルの西伊豆拠点にあるラボや海面栽培の生産現場にお伺いした上で商品を作るという一連の流れが良かったと思っています。やっぱり現場に行くと違いますね。普段は外に出ることが少ない店舗スタッフたちが現場に足を運ぶことで、熱量の高まる様子を見て私としても嬉しかったです。
寺松:スタッフの皆さんが、海藻を見て「かわいい!」と目をキラキラさせていたのが印象に残っています。
境:シーベジタブルの取り組みは社会的意義があるし、みなさんのお話を聞いて海藻の世界にグッと惹かれていきました。私自身は、一般的に出回っている海藻しか知らなかったのですが、シーベジタブルの海藻は、味がすごくいいし、商材として使うための見た目も良かったので、それを活かしたいと思いました。結果的に、当初コラボレーションを想定していた2商品から5商品まで増やしました。
寺松:全国的にシーベジタブルの海藻を使った惣菜がこれだけ多く並ぶことは初めてなので、とても嬉しいです。今回提供いただいた惣菜は、味はもちろん、見た目も美しい商品です。
境:我々はショーケース全体を見て、いろんなバランスを考えて組み立てています。お皿の中だけを見て美しく仕上げても、ショーケースに並べたときに様々な色が散らかってしまうような印象になる。だからこそ、1皿の中であまり色をつけない、もしくは沢山の食材を使わないことを意識しています。お皿に盛り付ける美しさとは違う考え方で商品開発に向き合っていますね。
また、DEAN & DELUCAは1カ月というスパンでメニューがどんどん変わるからこそ、みんなが知っていて、且つ売れ筋・定番であるケールサラダにシーベジタブルの商材を混ぜて作ることで、インパクトや注目度が上がるだろうと考えました。
寺松: 今回商品に使っていただいた、すじ青のり・とさかのり・若ひじきについて、開発に携わったメンバーの皆さんは、どんな反応でしたか?
境:「全部美味しい」と言っていました。若ひじきは香りと食感がとてもよくて、これまで食べてきたひじきとは全然違う商材だと感じました。「ひじき」という名前からイメージしていたものと、実際に食べてみたら違うというのは、インパクトがあって良いと思いました。
友廣:シーベジタブルの若ひじきは、特に希少な若芽だけを使用しているので、柔らかくシャキシャキとした食感が特徴です。ひじきは、誰でも一度は食べたことがあるかもしれませんが、「知っている」と思っていた海藻とは別物だったというギャップを感じていただけて嬉しいです。
シーベジタブル西伊豆拠点ツアー
ウェルカムの店舗スタッフが総勢10名、西伊豆にある海面栽培と陸上栽培の拠点を見学。数種類の海藻に実際に触れてみて、それぞれ異なる生産方法を間近に体感できます。
お昼ご飯は、地元のお弁当屋さんと連携して、シーベジタブルの海藻をたっぷり使ったオリジナル弁当をご用意。実際に食べた海藻が、どのように生産されているのか見てもらうことで、海藻をより一層身近に感じてもらうことができます。「海藻を使って、こんなこともできそう」という意見交換から生まれたコラボレーションでもあります。
オリジナル海藻弁当
(写真左下のオムライスから時計回り)
・若ひじきのオムライス すじ青のりソース
・タラとすじ青のりのパイ包み
・鹿肉サルティンボッカ あつばアオサ挟み
・白身魚のフライ すじ青のりタルタル
・とさかのりのナムル
・海老とあつばアオサのグラタン
・とさかのりの白和え
・若ひじきとすじ青のりのコールスロー
シーベジタブル西伊豆拠点ツアー
寺松:境さんから見て、海藻を使った商品を定番化していくうえで、お店側として感じる課題やハードルはどんなところにありますか?
境:今回はデリ惣菜で商品を作りましたが、手に取るお客さんの幅が広いパンでもコラボレーションしていけたらいいですよね。シーベジタブルの海藻を使った商品が「定番商品」として定着すると、お店でもコンスタントに出せるのでいいかなと思っています。
寺松:実は、海藻とパンの組み合わせは、すごく合うんです!社名である「シーベジタブル」には、海藻は“海の野菜”であるという想いを込めています。陸の野菜と同じように、海藻はそれぞれ色や栄養や最適な調理方法が異なります。私たちとしても、海藻をもっと野菜感覚で気軽に食べてもらいたいと思っています。
友廣:今後、取り扱っていただく海藻の量が増えたら、ウェルカムさん専用の「シーファーム」をつくれるかもしれません。シーベジタブルが海で生産している海藻の一区画を、特定の企業向けに海藻を育てていく仕組みです。実は以前から、そういった取り組みができないか構想していました。もしウェルカムさんと実現できれば、「ウェルカム SEA FARM」と名付けましょう(笑)。例えば、このシーファームに社員やお客さまを連れてくるような動きもできますし、そこで採れた海藻を使った商品を開発していただくことで、海や海藻を育ててくれる漁師さん、企業、そこで働く人々、そして生活者との間に、良い循環が生まれるのではないかと思います。
境:面白いですね。店頭商品に加えて、DEAN & DELUCAのECサイトでも販売可能な商品へと展開できたら、もっと広がりますよね。今回のコラボレーションで、DEAN & DELUCAで展開する定番食材を増やせる可能性を感じています。
寺松:以前、一般社団法人グッドシー*が、「海藻食に関する1万人アンケート」を実施していて、その中で、「海藻は好感度80%以上の食材」という回答や「健康や環境に良いなら80%以上の人がもっと海藻を食べたい」という結果がでていました。私たちとしても、潜在的に海藻の持つポテンシャルをこれだけ生活者が感じていることに驚いたので、それをどのようなアプローチで広げていくのか考えたいと思っていました。
そんな中で、今回のDEAN & DELUCAさんとのコラボで、「海藻=和食」というイメージを払拭するようなメニューを考案いただき、とても嬉しかったです。
境:今回取り扱った海藻以外にも、また新しい海藻で何か商品を作れたら面白いですよね。
寺松:シーベジタブルでは、研究段階を経て種苗生産技術を確立した海藻は現在30種類以上あります。まだまだご提案できる美味しい海藻があるので、ぜひ使っていただきたいです。今年の秋には、シャキシャキした食感の面白い海藻を発売する予定です。
DEAN & DELUCA
世界のおいしいものを集めた食のセレクトショップ。1977年、ジョエル・ディーン(Joel Dean)とジョルジオ・デルーカ(Giorgio DeLuca)により、ニューヨーク・ソーホーにオープンしたマーケットストアがはじまりです。日本国内では、マーケットストア19店舗、カフェ27店舗、スペシャルティストア(ワインストア)1店舗に自社オンラインストアを展開しております。小売そして中食、飲食という枠にとらわれず、食をたのしむ場を創出すべく、今日もなお、あたらしい食の感動をお客さまへ提供して参ります。
西伊豆で生産している海藻
シーベジタブルでは、30箇所以上で海藻の生産を行っています。その一つである西伊豆で種苗生産している海藻や、海で育てている海藻を一部ご紹介。
*一般社団法人グッドシー:海藻栽培を通じて藻場の再生と海洋環境の改善を目的とし、調査・研究や社会啓蒙活動に取り組んでいる団体。シーベジタブルは、同団体の調査に2024年から協力をしています。